農と食のこと

野生動物から農作物を守る

 近年、野生動物による農作物の被害が多く報告されています。今回は、町田市内にも生息しているハクビシン、アライグマの被害防止策を紹介します。

 農林水産省のまとめによると、ハクビシン、アライグマによる農作物の被害面積は年々微減傾向ですが、被害金額は年々微増傾向です。一方、環境省がまとめた全国のハクビシン、アライグマの年間捕獲頭数は大幅に増えています(表参照)。これは、捕獲頭数が増えても被害が減るわけではないことを裏付けています。

 これから紹介する被害予防・防止策を実践し、少しでも被害を抑えていきましょう。

対策1 個体数を増やさない

 被害を予防するには、まず、個体数を増やさない取り組みが必要です。次の事項を心掛けましょう。

  1. 餌となるものが手に入りにくい環境づくり
    最も避けなければならないのは、動物目線で見て、いつでも食べ物が手に入ってしまう環境をつくってしまうことです。収穫が終わっているにもかかわらず、取り残した作物をそのままにしたり、作物を畑の中に集めて廃棄したりすることも絶好の餌場を作ることになってしまいます。
  2. 住みづらい環境づくり
    ねぐらとなる場所や、繁殖を行う場所を減らすことも個体数の減少につながり、被害を軽減できます。住宅や倉庫の屋根裏等への侵入経路をふさぐようにしましょう。
写真: ハクビシン

1m程度のジャンプ力があるハクビシン

写真: アライグマ

木登りが得意なアライグマ

対策2 圃場の予防策を徹底

 アライグマは木登りが得意です。また、ハクビシンは1m程度のジャンプ力があり、細いワイヤを綱渡りできるほどのバランス感覚を持っています。ねぐらとなる場所につながっている電線も侵入経路となるため注意が必要です。

  1. 乾電池を使用した簡易な電気柵の設置
    軽い電流を流すことで驚かせ、恐怖心を植え付けることで侵入を防ぎます。
  2. 枝の伸びた植木の剪定を欠かさない
    木の枝を伝って畑へ侵入する可能性があります。植木の枝が伸びすぎていないかなど、確認をしましょう。
  3. 柵と地面に隙間を作らない
    畑の周りを柵で囲っても、地面から5〜6cmの隙間があれば侵入される可能性があります。穴を掘り、侵入する場合もあります。柵を設置する際には、地面から10cm程度の深さまで木の板などを埋めると、柵の下を掘って侵入することができなくなります。
  4. 定期的に畑の周りを歩く
    畑は人間がよく来る場所だと動物に認識させましょう。
  5. 鳥類の被害は黒色のテグスで防ぐ
    作物の周りを囲うように黒色のテグスを設置しましょう。光が当たっても見えにくく、侵入しようとして接触することで恐怖心を植え付け、再び近づくことを防ぎます。透明なテグスも有効ですが、光に反射することで認識でき、慣れてしまいます。そのため、長期間の効果は期待できないと予想されます。
    これらの対策に取り組んでも、全ての被害を防止できるものではありません。しかし、被害を少しでも防ぎ、野生動物との共存を進めていくためには、これらの対処法に取り組む必要があります。大切な作物を守るためにも、生産者一人一人が対策を行っていただきますようお願いします。
    電気柵についてのご相談や、その他ご不明な点がありましたら、JA町田市各支店経済課あるいは経済センター営農支援課までお問い合わせください。

鳥類による被害防止に有効な黒色のテグス
防鳥ナイロンテグス
黒 Slim(クロスリム)
規格:0.33mm×1,000m巻 価格:¥980(税込)
※JA各支店経済課で取り扱っています

注意

 野生動物を見かけても、むやみに近づいたり、触れないようにしましょう。けがや、伝染病を媒介するダニなどによる感染症を引き起こす原因となります。

きずな.2016 春_No.41掲載