農と食のこと

地域の人たちとの関わりを大事に
農業のこれからにも思いを馳せる

河合紀彦(のりひこ)さん
成美(しげみ)さん
図師町

 町田市農業研修への参加をきっかけに、営農のノウハウを学び、農業へのモチベーションが高まったという河合紀彦さん。  地域とのさまざまな結びつきを大事にしながら、農業の大切さを広める活動も積極的に行っています。  これからも健康維持を心がけ、長く農業に携わり、時代に合わせた形での後継者問題の解決、持続可能な農業の実現を目指しています。 (取材担当:忠生支店 河合紘希)

55歳より農業を引き継ぎ
未経験からの開始

にんにくの状態を確認する紀彦さん

 町田市図師町の河合紀彦さん(68歳)は55歳の時に農地を両親から引き継ぎ、兼業で就農しました。紀彦さんは畑を所有していたものの、はじめはやり方がわからず四苦八苦したと話します。農業については、雑誌やYouTube等を利用し、試行錯誤しつつ、奥様の成美さんにも手伝ってもらいながら始めました。
 そうして農業を続けていたところ、偶然にも町田市農業研修に参加する機会を得た紀彦さん。市役所で働きながら2年間の研修会に参加し、営農のノウハウを学びました。農業研修では、今までわからなかったことや困っていたことが解決するなど目からうろこの内容ばかりで、紀彦さんのモチベーションはどんどん向上していきました。ナスの栽培を土曜日に学んだら日曜日に自分の畑で試してみるなど熱心に農業と向き合いました。農業研修で営農を学び、実践し、成功したことに喜びを感じるという経験から、農業の面白さに気付いていったそうです。

さまざまな人と関わり
コミュニケーションを創出

自慢のデコポンの木と一緒に

 紀彦さんは農業を通してさまざまな関わりを作っています。その1つがCSA(地域支援型農業)です。CSAはCommunity Supported Agricultureの略で、農家が消費者である地域住民と支え合いながら営農する新しい農業経営の方法です。地域の生産者と消費者が連携して、流通業者を介さずに直接契約で野菜を定期購入できるものです。
 また、紀彦さんは「まちだベジハブ」の活動にも積極的に参加しています。「まちだベジハブ」は町田市が地元の農業者と町田の農に関心がある市民や企業などさまざまな立場の人たちをつなぐ仕組みや取り組みです。取り組みの一環として、紀彦さんは図師小の畑見学や、大学生の農業ボランティアの他、中学生の職場体験等を10年以上受け入れ続けています。
 さらに、さまざまな人に農業に関心を持ってほしいとの思いで「とうきょう援農ボランティア」の仕組みを利用してボランティアを募集しており、年間延べ200人以上の人が紀彦さんの畑で農作業を行っています。

健康第一
生涯現役のために

 農業に関してさまざまな工夫を凝らしている紀彦さんですが、今後の展望については、「長く続けていくには健康が一番大事」だと言います。自分で野菜を作るので、食生活が新鮮な野菜中心になります。そして農作業という運動で、ジム等に通うことなく体調を維持でき、生涯健康に農業をすることができると話しています。

農業の新たな風、
後継者不足の解消と
働き方改革の可能性

 若い世代が農業に触れることはもちろんですが、シニア世代においても同様だと紀彦さんは語ります。近年の働き方改革による在宅ワークやリモートオフィスによって通勤時間が減り、農業と触れ合うチャンスが増えています。こういったニーズを取り込むことによる後継者不足の解消や、持続可能な農業の実現を提案しています。
 さまざまな分野で農業を支えている紀彦さんは、最後に「今ある里山の風景を次世代に残していきたい。そのためには農業や町田を多くの人にもっとよく知ってもらいたい」と語っていました。