農と食のこと

ベランダでできるキッチンガーデン

第17回:ワケギ(ヒガンバナ科ネギ属)

土壌医 藤巻久志

 新聞や雑誌は常用漢字の使用が多いので、胡瓜(キュウリ)や人参(ニンジン)、蚕豆(ソラマメ)などの漢字表記を目にすることが少なくなりました。野菜の漢字は、品種と同様に長い歴史と文化があるので、後世にきちんと伝えたいものです。

 ワケギは漢字では分葱と書きますが、ワケネギと読んでしまう人も多いです。ワケギはネギ(葱)やタマネギ(玉葱)、ラッキョウ(辣韮)、アサツキ(浅葱)などの仲間です。ネギやタマネギは種から栽培しますが、ワケギはラッキョウやアサツキと同じように種球から増やします。

 種球からの栽培は手間のかかる育苗が不要なのでとても簡単です。ワケギは畑でなくても日当たりの良いベランダなら栽培できます。

 種球は7~8月にホームセンターなどで購入します。8月下旬~9月下旬に種球を半日ほど日に当てて乾かし、外皮を丁寧に剥がし、先端の枯れている部分をはさみで切り取ります。

 深さ15cm以上のプランターに市販の培養土を入れ、株間10cmで2~3球ずつ上部が少し出るように植え付けます。過湿と過乾にならないように、土の表面が乾いたら水やりします。草丈が10cmくらいになったら、1週間置きに1000倍の液肥を施します。

 草丈が20cmくらいになったら、株元を2~3cm残し、切り取り収穫します。再び葉が伸びてくるので、2~3回収穫できます。

 次回の種球を取る株は、球根を肥大させるために葉は収穫しないで伸ばしたままにします。5月に葉が枯れて倒伏したら、種球を掘り上げます。1個の球根が10~20個以上になります。風通しの良い場所で貯蔵します。

 ワケギはネギやニラのような刺激性の臭いはありません。穏やかな香りと風味を楽しんでください。酢みそあえや卵とじにするだけでなく、ナムルやチヂミにして韓国の食文化を味わうのも良いでしょう。

第17回:ワケギ(ヒガンバナ科ネギ属)

※藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。

※掲載内容は「JA広報通信」より引用したものです。