農と食のこと

ベランダでできるキッチンガーデン

第22回:小松菜(アブラナ科アブラナ属)

土壌医 藤巻久志

 「漬け菜」とは一般には漬物に使用する菜っ葉ですが、農学では非結球のアブラナ属の葉菜のことをいいます。野沢菜やチンゲンサイなどがあり、結球するハクサイやキャベツは含みません。

 江戸幕府第8代将軍徳川吉宗が命名したといわれる小松菜は、関東地方で栽培されてきたツケナの一つです。1970年代に世界初の小松菜の交配種「みすぎ」が育成されると、新しい産地が次々にでき、全国の野菜売り場に並ぶようになりました。

 交配種は雑種強勢と両親のいいところ取りによって、生育が旺盛で収量が上がり、病気に強く味も良くなります。現在のツケナの大半は交配種です。日本の野菜の育種は世界のトップクラスです。

 交配種はそろいが良いので、規格通りに出荷する生産者にとっても、同じ価格で販売する流通業者にとっても、大きなメリットがあります。一斉に収穫はしない家庭菜園では、収穫期に幅がある「固定種」の方が良いかもしれません。

 小松菜は暑さや寒さに強く、ほぼ周年栽培ができます。深さ10cm以上のプランターに市販の培養土を入れ、5cm間隔に筋まきします。小松菜は種が細かく多くまきがちですが、発芽が良いので厚まきすると間引きに手がかかります。薄く覆土をして軽く鎮圧します。発芽まで乾燥させないようにします。

 発芽後、順次間引きして、本葉4〜5枚のときに株間を約5cmにします。水やりは朝方にし、夕方に土の表面が乾く程度にします。追肥は1週間に1度、1000倍の液肥を施します。本葉4〜5枚になった物から収穫し、本葉7〜8枚までに終えるようにします。

 水菜、広島菜、芭蕉菜など、小松菜以外のツケナも栽培方法は似ています。子どもの頃のお雑煮やみそ汁に入っていた菜っ葉を思い出して、種まきするのも良いでしょう。

第22回:小松菜(アブラナ科アブラナ属)

※藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。

※掲載内容は「JA広報通信」より引用したものです。