農と食のこと

自然豊かな地域でおいしい野菜を生産
たくさんの人の食卓に届けたい――

田中 豊さん(52)
上小山田町

 町田市上小山田町の田中 豊さん(52)は8年前、自動車関連の製造業から農業の世界に転身しました。実家が農家ということもあり、消防団や周辺の仲間たちが次々と就農するのを目の当たりにした田中さんが農業を継ぐことは自然な流れだったといいます。父の進典さんとともに、現在は葉物野菜を中心に11種類以上もの野菜を育て、JA町田市の農産物直販所「アグリハウス忠生」や学校給食用の食材として出荷しています。豊かな自然がたくさん残されている小山田で、〝おいしい野菜〟にこだわって野菜を栽培している田中さんに思いを聞きました。
(取材担当 忠生支店:穗滿勇斗)

仲間の熱い思いをきっかけに
製造業からの転身を決意

アグリハウス忠生に小松菜を出荷する田中さん

 田中さんが勤めていた自動車関連のメーカーを退職し、就農したのは2013年8月です。実家が農家ということもあり、いつかは家業を継ごうという思いがありました。その背中を後押ししたのは、一足早く就農した消防団や周囲の仲間たちでした。農業に対する熱い思いや、自分の作った野菜を食べてもらったときの感動を聞いているうち、田中さんも次第に農業に対する憧れが強くなってきました。

 44歳で就農した田中さんですが、当初は分からないことばかりでした。野菜が理想の形にならず、悩んだこともありました。そんなとき、田中さんの力になったのが父の進典さんや仲間たちの存在でした。進典さんに手取り足取り農業の基礎を教わり、一つずつ課題を解決。また、就農するきっかけとなった仲間たちにも相談しました。「初めて自ら育てた野菜を収穫したときのことを今でも覚えています」と振り返ります。こうした経験を通じて、仲間とともに農家として成長していくことができたと実感しています。

おいしさにこだわって
11種類以上の農産物を生産

おいしさにこだわって育てた野菜

 現在は、周辺の出荷者の農作物とかぶらない葉物野菜を中心に、小松菜やジャガイモなど年間11種類以上の野菜を育てています。また、過去には小山田ミツバやごせき晩生小松菜を育てていました。キノコ類は収穫期になると午前3時に起きて作業をしなければなりませんが、「おいしい野菜を作ることにこだわっています。たくさんの方に自分の作った野菜を食べていただいていると思うと、嬉しい気持ちでいっぱいになります」と笑顔で話します。

 なかでも田中さんが愛情を込めて育てた小松菜は「とてもおいしい」とアグリハウスでも人気です。

農業を続けるため
自然環境を守る

仕事がはかどるようになったというトラクター

 大切に育てた農作物は、市内の学校給食の食材として提供されることもありますが、主に「アグリハウス忠生」に出荷しています。「お客さまがいつアグリハウスを訪れても、新鮮な野菜がたくさん置いてあるという環境を作っていきたいですし、ここに来れば野菜は間違いないという店にしたいです」と未来像を描いています。

 田中さんが農業を続けていく上で大切にしているのは地域の自然環境です。「小山田には昔から変わらない豊かな自然が残っています。ここに住んでいる一員として自然を守っていきたいと思っています」と語ります。

 今年に入ってから元日しか休みが取れていないなど、就農以来忙しい日々を過ごしていますが、毎日畑に出ていたおかげで、天候による農作物の成長の変化が分かるようになりました。就農した当初はそうした変化が分からなかったのですが、毎日観察し続けたことで、少しの変化で水やりや追肥のタイミングに気がつけるようになりました。「今では農業は当たり前の存在で、生活になくてはならないものです。毎日の食卓に新鮮でおいしい野菜を届けることが、農家としての大きな仕事で、これからも頑張っていきたいです」と語ります。

 今は休みを取るのが難しいものの「休みの日に好きなバイクに乗ってツーリングに出かけるのが楽しみです」と笑顔で語ってくれました。