農と食のこと

菊栽培に情熱 野菜の無人販売も好評

山下健二さん
南つくし野

山下健二さん (74) 南つくし野わが子のように愛情を持って
山下健二さん (74) 南つくし野

 南つくし野在住の山下健二さん (74)は、地域の農業委員として、農業の振興に向けた農地保全・利用促進を図る取り組みに力を入れています。農地パトロールや、農家座談会などの相談活動を積極的に実施する多忙な毎日ですが、畑での野菜生産に加え、菊の栽培に情熱を傾けています。

少量多品目の野菜が人気

 野菜部会に所属。一種類の野菜を多く作るのではなく、いろいろな種類の野菜を栽培するようにしています。自宅前での無人販売が中心で、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ニンジン、ハクサイなどが人気です。

 無人販売を始めた当初は、正規の金額が入っていないこともあったといいます。集金箱には、1円玉や外国のコイン、パチンコ店のメダルなどが入っていて苦労したそうです。今ではもう、そのようなことはありません。毎回買ってくれるおなじみの人も増えてきました。無人販売にも関わらず、「今日は、ホウレンソウないの?」「ハクサイは?」などと、声を掛けてくれる人もいます。

菊の美しい姿に感動

 菊の栽培はもともと、山下さんのお父さんの趣味でした。平成7年ごろ、お父さんが体調を崩し、「菊の鉢が重たくて持てなくなったので、もうやめる」と言い出したのが、山下さんが菊栽培を始めるきっかけでした。お父さんの知り合いが菊の苗を持ってきてくれるので、「せっかく持ってきてくれるのだから……」と、栽培に挑戦することにしました。

 山下さんはそれまで、菊栽培の経験はありませんでした。菊は、植えてから成長するまでほぼ一年はかかります。実際にやってみると、普通に水や肥料を与えているだけでは思うような菊にならないことを実感したといいます。

 水をやりすぎても、少なすぎても、日に当てすぎても駄目で、肥料を与えすぎると花びらに影響します。アブラムシやハダニ、ヨトウムシなどの害虫駆除も大変です。特に花びらの中央部分に害虫が入り込むと手に負えません。気が付いたときは手遅れで、花が食い荒らされ、ひどいことになってしまいます。最初のうちは、なかなかうまく育てられず、「もうやめよう」と何度も思ったそうです。

 励みになったのは、熊野神社の菊の会で、賞をもらったこと。山下さんは「本当に手塩にかけ、わが子を育てるような感じ。非常に難しいですが、できあがった時の美しい姿に感動し、毎年栽培するようになりました。賞をいただいたり、他人に見てもらって喜んでもらえたりするのもうれしい」と話します。

 現在は、「大菊3本仕立て盆養」の厚物(あつもの)や、管物(くだもの)を栽培しています。厚物は花びらがまりのように厚く盛り上がって咲くもので、管物は花弁が管状になるものです。多いときは40鉢ほどを栽培していましたが、やはり手間ひまがかかるので、今では15鉢ほどにしているそうです。

より良い菊づくりへ

森さんのナス畑。枝のV時誘引が特徴。手塩にかけて育てた菊の花

 「植え付けから開花まで、寒い日、暑い日、雨の日も、わが子のように愛情を持って育ててきたという自負があります」と山下さん。「一つ一つの菊はすばらしく、良い出来だと思うのですが、出展してみると自分のより良い菊を見て、まだまだだと思ってしまいます。ちょっと悔しい思いをするので、『また来年は、今年よりも良い菊を作ろう』と思います。今後は、今までに育てたことのないような大きな菊を育ててみたいと考えています」と夢を語ります。

きずな.2014年 冬号_No.32掲載